2013年8月2日金曜日

3Dプリンターと雕透花人物套球

3Dプリンターの実用化が進んでいる。
20年前「プロダクト・オン・デマンド」と言うコンセプトで、外観すらもカスタムメイドするECサイトを考案したが、企画段階で風と共に去った・・・


私は、物事を考察する時に、100年先1000年先を想定する様にしています。これは、フィクションとなり論理的ではないと言われますが、「不可能という偏見」から解き放たれ、技術が進化した状態での正しい考察が出来るからです。

その意味で、3Dプリントは、まだ発展途上の技術ですが、100年後を考えれば容易にこの技術が普及した生活を予測できるでしょう。
メガネなんか量産の時代は終わっているでしょうね。他にも沢山ありますね、

さて、話は変わって
「雕透花人物套球」という工芸品があります。

 
台湾の故宮博物館の展示品である。(写真出典:台北ナビ)

象牙の球体の中には17層(一部情報では21層ともあるが、故宮博物館にはたしか17層と書いてあった)の中空の球ががありそれぞれ微細な彫刻がなされている。

公式に発表されている作り方:
まず象牙を球形にととのえたうえで、中心に向かって八方から円錐形の穴を穿つ。そこに特殊な小刀を差し込み、中心部の一番小さい球体を彫り出す。次いで第二層、第三層と、円錐形の穴を手がかりに、内側から外へ向かって薄いボールの皮を削り出すように、一層ずつ回転する球体を彫り出していく。

制作には親子3代にわたったと言われており、なぜ、この様な物を創ったのか? それは、「皇帝に喜んでもらう」ただそれだけと言う事らしい。?
もちろん、美術工芸としての大きな達成感や、皇帝に認められれば孫子の代まで生活や身分は安泰などの意味もあったでしょう。


この「雕透花人物套球」より複雑なものが3Dプリンターで作成する事が出来ます。

しかし、私は皇帝ではないですが、この雕透花人物套球と3Dプリントされた同じ物を献上されたら、象牙の削り出し雕透花人物套球をありがたく思うでしょう。

この感覚が「製品」と「美術工芸品」との違いなのかもしれません。



つまり、3Dプリンターで、雕透花人物套球を作っても意味がないのです。(技術デモにはなる)
デザイナーはこの技術の正しい使い方を見いださなくてはなりません。

たぶん、デザイナーが素材屋さんや技術屋さんをたてて調整役に回る事が必要だと思います。

ここぞとばかり、デザイナーの独り善がりによる自己主張は封印しましょう。


2013年6月18日火曜日

デザインは、まだまだですよ哲学を語るのは・・・

最近話題のiOS7のデザイン変更。グラフィックユーザインタフェースを時代に合わせた変更について、物理学者(Yでは無い)との会話した。
そして、どうも釈然としなかたことが、何となく分かった気がした。

デザインという行為はまだ右も左も分からない赤子であるということ。


まず、宇宙物理学のお話しです。
天文学の歴史は人類の歴史そのものと同じくらいに古い。
紀元前384年アリストテレスは、天体は完全な球形であって完全な円軌道上を動いているとした。一方、この地上は不完全な世界であり、これら二つの世界は互いに無関係であると考えていた。16世紀にコペルニクスが地動説を唱え、ガリレイやニュートンそしてアインシュタインにつながってくる。

最近宇宙は、星やガスなど目に見える物質と、ダークマターと呼ばれる観測できない質量を持った物質で構成される事が分かってきた。
そして、宇宙はビックバンで始まり、やがて自分の質量で収縮に向かうとされていた。
しかし、15年ほど前に新たにダークエネルギーが提唱され、我々の宇宙を構成するものは、下記の3つに分類できる様になった。

 観測可能なもの :4%
 ダークマター  :23%
 ダークエネルギー:73%

そしてこのダークエネルギーは、反発するエネルギーであるため、ビックバンで拡張している宇宙が、縮小に向かうことなく、そのまま加速度的に拡張し続けると言う事になる。

もちろん、ダークマターやダークエネルギーは観測で間接的に説明できている。

アリストテレスから現代まで2300年経っても宇宙物理学は新たな事象が発見され進化し続けている。学問として過去を否定しながら進歩している。


さて、「デザイン」は、いったいどのくらい歴史を積み重ねたのでしょうか?
デザインの語源は、「計画を記号に表す」という意味のラテン語designareらしいです。
ラテン語を語源とすると、ものすごく古いようですが、我々が認識するデザインは、商業的なデザインをデザインと呼んでいます。なぜなら、デザイナーと呼ばれる人はデザインという行為を商売にしているからです。
また、プロダクトデザインの様に、一部のデザインは「量産」を前提にしています。

そうすると、今のデザインの歴史は18世紀の産業革命以降で、アールヌーボー、バウハウス、アーツアンドクラフツなどなどありましたが、せいぜい200年程度と言う事です。
先の宇宙物理学のような他の学問や哲学に比べ歴史も浅く赤子のようなものです。したがって、まだまだ、「デザイン哲学」なんて事を語るには早すぎます。



デザイナーは、先陣のデザイナーの意見や考え方を糧にする事は重要で、積極的に知識として取り込むべきです。
ただし、それは正しいとは限りません。常に新しく進化させるべく、先陣の語る事を否定して進む事も重要です。

デザイン界のアリストテレス、ガリレイ、ニュートンと呼ばれる人がはっきり分かるのは、たぶん2000年後です。

ただし、それでも正しいデザインの手法はみつかっていないでしょう。